エピソード41『プロジェクトうねックス 〜挑戦者たち〜 前編』

2008年6月1日。

東京、新宿で開催されたダーツトーナメント『うねり』。

新宿にある幾つかのダーツバーが予選会場となり、実力にあわせてクラス分けされた出場者たちは、それぞれに散って予選を行う。

予選を抜けると、決戦の地はダーツバーロスカボス新宿店。
ロスカボスで行われる決勝トーナメントは、出場者たちの憧れの聖地でもあった。

その『うねり』を控えた、とある日の渋谷。

そこには、いよいよ窮状に追い込まれている男たちがいた。

ダーツショップBAT"DARTS(ナインダーツ.jp)のSTAFF、『みっちー&かなっぷ』である。


二人とも、ダーツ歴は長いものの、なかなか上がらないレーティング。

『第2回渋カボ杯』をはじめとする、幾多のトーナメントでの不甲斐ない成績。

お客さんたちにまで浸透した『ちこっぷ』や『ひまっぷ』、或いは『ペルー人』などの、不名誉なニックネーム。

ショップ店員としての尊厳は、今やすっかり失われてしまった。

「あそこのダーツショップ、いつもロン毛の兄ちゃんがフラフラしてるよな」

そこに訪れる誰しもが、彼らは一応ダーツショップの店員である、ということを忘れていた。

もはや通常の手段での失地回復は、不可能であった。

こうなったら『うねり』で優勝するしかない。
二人の男は初めて本気になった。


かつて、日本で行われた総合格闘技イベント『UFC-J』。

グレイシー柔術の黒帯、マーカス"コナン"シウヴェイラから、見事な一本勝ちを奪ったのは、プロレス出身の桜庭和志だった。

「プロレスラーは、本当は強いんです」

桜庭の試合後のコメントは、歴史に残る名言へと昇華した。


渋谷で鬱屈としている二人の男たちも、当時の桜庭同様、チャレンジャーだった。

己のプライドを賭して戦い、そしてこう言いたかった。

「ダーツショップの店員は、本当は強いんです」

丸パクりだった。


誰もが不可能だと思った『うねり』の優勝。
これは、その不可能に挑戦し、暖かい声援を受けながらも華麗に散っていった、酔いどれ男たちのドラマである。

風の中のすーばるー♪

砂の中のぎーんがー♪




というわけで、前置きが異様に長い今回。

いよいよ『うねり』に出場した私かなっぷ。
今回はアルコールによる被害を最小限にくいとめましたので、そのレポートを詳細にお届けしてまいります。

題して『プロジェクトうねックス 〜挑戦者たち〜』、前中後編、及び完結編の全4部作。

長くて長くて長いですが、これは書き記しておかなければならないのです。
ダーツ歴4年、その集大成ともいえるダーツ人生第一章のすべてがここにあります。

暇つぶしにでもお読みいただければ幸いです。

では、どうぞ。




……2008年6月1日午前10時。

みっちー&かなっぷの二人は、渋谷BAT"DARTSへ午前10時に集合することになっていた。

二人が出場するSilverクラスの集合は午前11時30分〜。
その前に充分なウォーミングアップをして、万全を期すのである。

かなっぷは、頭痛薬、レッドブル、そしてアサヒスーパードライ(酒と薬は一緒に飲んじゃダメ)を持参し、定時に渋谷へ到着した。
普段『遅刻王』の称号を欲しいままにしているかなっぷは、こういう時だけキッチリ時間通りに現れる。

一方、普段、時間厳守のみっちーは、ダーツを家に忘れるという大チョンボを犯した。
30分以上の大遅刻である。

しかし、かなっぷは怒らなかった。
エントリーにさえ間に合ってくれれば、どうでもよかった。


……午前11時30分。
BAT"DARTSでのウォーミングアップ終了後、二人は新宿へと移動する。

予選会場は、歌舞伎町にある『Bar ACQUA』だった。

店内には、緊張が張りつめ、互いに相手を牽制し合う独特の空気が流れていた。

いよいよ、これから予選が始まる。
BAT"DARTS以外ではあまり投げない内弁慶のかなっぷは、再びのウォーミングアップをしながら緊張していた。

狙った場所に、思い通りに刺さってくれない。

「BAT"DARTSと勝手が違うんで、こりゃ本当にヤバいと思いました……」

とにかく、緊張をほぐすため、自らのウォークマンのイヤホンを耳に挿入した。
トーナメントでは音楽が大事、それが、みっちーとかなっぷの持論だった。

すると『Bar ACQUA』の店内に、突如、耳覚えのある曲が流れ始めた。

Perfumeだった。

かなっぷは二年前、とあるイベントで生Perfumeを観かけたことがあった。

なんかうねうねするダンスに、YMO以来の耳新しいテクノポップチューン。
それは、今までロック漬けだったかなっぷにとって、衝撃以外の何ものでもなかった。

「なんじゃこりゃあ……という身体に風穴空けられた感じでしたね」

以来、Perfumeはかなっぷの中で気になる存在であり続け、そして最近、ようやく世間的にもブームが到来したのだ。

店内に流れるPerfumeで、ノリノリになっている気持ち悪いロン毛の男が二人。
その姿を見て、『Bar ACQUA』のSTAFF、RABIさんが言った。

「DVD流しましょうか?」

「まじっすか!?」

ちなみに、みっちーは『のっち』が。
かなっぷは『かしゆか』が好きだった。

「『あーちゃん』は、すっぴんのが可愛いよな」

みっちーが、そうやってフォローした。

ダーツの方も、きちんとフォローしてくれるとありがたいのに。
かなっぷはそう思いながら、初戦に向けてのコンセントレーションを密かに高めていく。

こんなことで大丈夫なのだろうか。
予選突破はなるのであろうか。

先行きは不透明だった。

To be continued...


本日の腕前:Rt.7.40 ↑↑(DARTS LIVE)Bフライト
本日の一言:『直前までの調整で、レーティング上がりまくり』
uneri-1.jpg





WEB SHOP Batdarts Yahoo!店


WEB SHOP Batdarts 楽天市場店


バットダーツtwitterツイッター


かなっぷAAフライトへの道