エピソード43『プロジェクトうねックス 〜挑戦者たち〜 後編』
『うねり』決勝トーナメントの一回戦を快勝。
ベスト8が確定したみっちー&かなっぷの迷コンビ。
いよいよ決戦の地、聖地ロスカボスへ向け、二人は旅立った。
が、その五分後。
二人は道に迷っていた。
「うねぇックス……」←プロジェクトX風に。←ひつこい。
……2008年6月1日17時頃(記憶曖昧)。
「コッチちゃうやんけ! はげっ!」
どこをどう間違えたのか新宿駅方面へ向かうはずが、大久保辺りにいた。
「お前がコッチや言うたやんけ! ぼけっ!」
けなし合いながら、おおよそ30分後。
二人はようやくロスカボスに到着する。
ロスカボスは、すでに大混雑していた。
かなっぷは、ふと、あることを思い出した。
それは……先日、渋谷で行われた『第二回渋カボ杯』。
かなっぷは渋谷で泥酔し、記憶をなくす大失態。
しかし、その時にそこで知り合った人々は、かなっぷを問答無用で許してくれた。
泥酔しようが、昏倒しようが、記憶なくそうが、かなっぷはかなっぷ。
BAT"DARTS店頭で顔をあわせれば、ニッコリ笑って、気さくに話しかけてくれるのである。
そんな愛ある皆さんに『うねり』の話をすると、決まってこんな言葉が返ってきた。
「ロスカボで会いましょう」
お互い決勝トーナメントの準々決勝に進出して、そこで再会しようじゃん!
みたいな、ポジティブな意味合いの言葉であった。
そして、かなっぷはやってきた。
みんなとの約束通り、このロスカボスへやってきたのだ。
うおお、もはやかなっぷは『走れメロス』のメロスの気分であった。
人質となったセリヌンティウスであるところの『うねり』の優勝。
それをば、奪還するため、命を賭して再び戻ってきたのだ。
走れ、かなス。
さて、そうこうしているうちに、Silverクラスの準々決勝が始まる。
人の波をかきわけて、マシンの前にたどり着く、みっちー&かなっぷ。
そこには屈強そうな対戦相手が待ち構えていた。
奇跡に次ぐ奇跡、つまりミラクルで、今までは勝ち進んでこれた。
しかし、ロスカボにおいては、そうは問屋がおろさない。
目の前の金髪のニーチャンたちは黙々と投げ込んでいる。
やばい、強そうである。
今度こそ、本当に年貢のおさめ時かもしない。
かなっぷが弱気になった、まさにその時だった……。
「かなっぷサン、頑張って」
「えっ……」
後方を振り返ると、『第二回渋カボ杯』で知り合った面々が集まっていた。
それも、一人や二人ではない。
ざっと見ても十人くらいは集まっている。
おまけに、BAT"DARTSの常連さんたちもいる。
それに、普段あまり喋ったことはないが、顔くらいは見知っているお客さんまで。
みんな、試合を心待ちにしているかのような表情を浮かべていた。
かなっぷは「あ、ここはホームなのだ」と錯覚した。
よくよく考えてみれば、実は、このロスカボス新宿店。
クルージングプランというナイスな感じのコースがあり、合◯ンで、過去何度もお世話になっていたのであった。
まさにホーム、まさに我が家である。
ちなみに。
かなっぷは、合◯ンでダーツをして、ぐんぐんに盛り上がった試しがない。
しばらくはしないそうです、ダーツ合◯ン。
さて、試合は圧勝だった。
強そうな雰囲気とは裏腹に、相手はロスカボの雰囲気にのまれ、調子が悪そうだった。
また、内弁慶のかなっぷが、鬼神の如き強さ、というほどでもないが、外でも弁慶であった。
しかも、それまでしこたま呑んでいたのにも関わらず、泥酔はしていなかった。
でもそれらは、すべて、みんなが応援してくれたおかげだ。
かなっぷはそう思った。
かなっぷには、ダーツは一人でするもの、という概念がどこかにあった。
ストイックにダーツ道を極めようとしたら、孤独な戦いを強いられる。
そういうものなのだ、ダーツは、と思っていた。
でも、こういう楽しみ方もあるのか、と初めて知った。
みんなで支え合いながら、一丸となって試合に勝利する。
そうやってステップアップしていく方法もあるのだ、と悟った。
ありがとう、みんな。
ぼくはシアワセだよー、と叫びたかった。
恥ずかしくて叫べないので、ウィスキーをぐびぐび呑んだ。
そして、ついに運命の準決勝を迎える。
もはや、なんだってできる気がしていた。
だって、みんなが応援してくれるから。
そうやって、かなっぷはすっかり安心しきっていた。
1レグ目は完勝だった。
みんなの声援が乱れ飛び、かなっぷは興奮した。
なんたって、自分のパフォーマンスでみんなが喜んでくれるのだ。
楽しくないわけがない。
ところが……。
「空を飛べるんだ」
調子に乗ったイカルスは、太陽の熱に、ロウで固めた翼をもぎ取られてしまう。
2レッグ目。
調子に乗ったフィニッシャーかなっぷは、お酒に、フィニッシュする能力をもぎ取られてしまった。
待っているのは、墜落だった。
なかなかフィニッシュできない。
それは、みっちーも一緒だった。
ジリ貧状態でいたところ、相手にフィニッシュをさらわれた。
そんな馬鹿な。
あんなにも活躍したフィニッシャーかなっぷは、一体どこへいってしまったというのか。
そして、悪い流れのまま、最終レッグへ。
最悪の結末だけは避けなければならなかった。
避けなければならなかったけれど、避けきれなかった。
事故。
フィニッシュできない、という大事故。
そうして、みっちーとかなっぷは、帰らぬ人となった。
満を持して臨んだ『うねり』春。
結果は3位入賞だった。
優勝を狙い、そのためだけに調整を続け、そのためだけになんかいろんなものを我慢した。
その結果が3位。
満足なんか、到底できなかった。
失意のドン底で、氷川きよしの『ズンドコ節』が無限ループしていた。
「ずん、ずんずん、ずんどこ……きよし!」
きよし。
きよし。
たけし。
コマネチ。
3位という現実を受け入れたくなかった。
その後、下北沢の焼肉店で祝勝会&反省会が開かれた。
しかし、早起き&酔いどれのかなっぷは、完全に電池が切れていた。
レバ刺だけ食べて、一人だけタクシーで帰宅するのだった。
みんなが期待していた。
声援がありがたかった。
どうしても勝ちたかった。
けど、勝てなかった。
かなっぷは部屋で一人きりになった。
その日の出来事を思い返し、そして少し泣いた。
それでも明日はやってくる。
To be continued...
本日の腕前:Rt.7.71 ↑(DARTS LIVE)Bフライト
本日の一言:『BBが見えてきた』